遺産分割協議

1 遺産分割手続の一般的な流れ

方針イメージ

 被相続人に遺言書がなかった場合などは、遺産分割協議によって遺産を分割することになります。その一般的な流れは、次のとおりです。
(1) 遺産分割手続の最初にすることは、被相続人の死亡の日時場所の確認と相続人の確定です。そのためには、戸籍関係の調査が必要になります。
(2) 次に、遺言書の有無の確認をします。
遺言書があれば、遺言書の内容やその有効無効を検討して対処します。
 遺言書がなければ、次の(3)以下により、遺産分割手続を続けます。
(3) 被相続人の積極財産・消極財産等遺産を調査把握し、必要に応じて財産目録を調整します。
(4) 遺産の多寡などによっては、相続の放棄や限定承認を検討します。
 これらの手続は家庭裁判所に申述して行いますが、それができる期間は、自分のために相続開始があったことを知ったときから3か月以内です。
(事情による期間伸長請求手続があります。民法915条1項、924条、938条)
  ※相続の放棄
   ・主に、相続財産として積極財産よりも負債の方が多い場合に行われます。
    放棄は相続が開始された後にのみ許されます。
    放棄すると「最初から相続人にならなかった」ものとみなされます。
  ※限定承認
   ・相続債務は相続財産のみで決済するとの留保付きで承認すること。
    相続財産が債務超過かどうか不明確な場合に行われることが多い手続です。
(5) それらを踏まえたうえで、相続人間で遺産分割協議を行います。
(6) これとは別に、特に納税の関係で留意すべき点があります。
 ⅰ相続開始後4か月以内に、被相続人の準確定申告があります。
 ⅱ同じく「10か月」以内に、遺産分割協議を成立させて相続税を納付する必要があります。この時点で協議が整っていなければ、暫定的に、相続分に応じて申告し納税する必要があります。

2  遺産分割協議の実際

(1) 相続人間で、遺産をどのように分けるかについて、協議を行います。
 協議が整えば、それを「遺産分割協議書」にまとめて、分割協議が成立となります。
(2) 話し合いが不可能であるとか、まとまらなかった場合には、一般的には家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てます。
 調停が成立しない(不調)場合には、審判手続に移行し、審判で最終的な決着がつくことになります。
 その間に、相続人間で、特別受益寄与分についての問題が出てくることも少なくありません。
  ※特別受益
   ・相続人中、被相続人から生前贈与や遺贈を受けた方がいる場合に、その受けた利益のことを言います(民法903条)。
    特別受益がある場合には、これを相続財産に加算して相続分を計算することになります。
  ※寄与分
   ・相続人中、被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与があった方について、遺産分割に当たりその寄与したことを考慮する制度(民法904条の2)
(3) また、遺産分割の調停・審判は家庭裁判所で行われますが、相続人の範囲や遺産の範囲等について争いがある場合には、基本的には、まず地方裁判所でその点の解決をした上で、家裁で遺産分割の審判を行うことになります(便宜、既判力を問題としなければ、これらを家裁で一括して行うこともできます。)。

相続人間での話し合いの進行如何によっては、是非、お早目にご相談ください。