遺留分減殺請求

 はじめに

方針イメージ

 「遺留分」の意義は上記メニュー「相続・遺言など」の1の中に記載したとおりですが、言い換えますと、相続人(兄弟姉妹は除かれます)が、被相続人が他の人に生前贈与や遺言をしても、これによって奪われることなく、法律上取得することを保障されている相続財産の一定割合のことを言います。遺言が相続人の遺留分を侵害している場合には、遺留分を侵害された方は、遺留分を侵害している方に対して、遺留分減殺請求を行うことができます。その手順は、次のとおりです。

 遺留分権利者

 遺留分権利者は、被相続人の配偶者・子(代襲相続人を含む。)・直系尊属です。兄弟姉妹は含まれません(民法1028条)。相続欠格事由に該当する方及び相続を廃除された方については、代襲相続が認められています(民法1044条、887条2項、3項)。相続又は遺留分を放棄している相続人は、その代襲者を含めて遺留分減殺請求権を有しません。

3 遺留分の割合(民法1028条)

 まず、相続人が直系卑属だけの場合の遺留分の割合は、遺産(積極財産の価額に生前贈与した金額を加えた額から債務の全額を控除した額)の2分の1です。遺留分権利者が数人いるときは、これを法定相続分に従って配分します。
 また、相続人が配偶者と直系卑属あるいは配偶者と直系尊属の場合や配偶者だけの場合もこれと同じ割合です。
 これに対し、相続人が直系尊属だけの場合には、遺産の3分の1です。直系尊属が数人いれば、これを均等に配分します。

 遺留分減殺請求権の行使

 遺留分減殺請求権の行使は、相手方に対する内容証明郵便等による意思表示によっても行うことができますが、それに基づく話合いがつかない場合には、訴訟により解決することになります。
 請求権を行使する場合の相手方は、まず遺贈があれば遺贈を受けた方になります。遺贈が数個あるときには、減殺金額を遺贈額に応じて按分して請求します。次に贈与を減殺するとの順になります(民法1033条から1035条)。
 減殺は、現物返還が原則ですが(民法1036条)、その価額を弁償する方法でも良いとされています(1041)。
 なお、遺留分減殺請求権には、短期消滅時効が規定されています(民法1042条)。相続の開始と減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間で時効消滅します。もし仮に、遺言無効の訴訟を提起し、その勝訴を信じていたとしても、予備的に、遺留分減殺の意思表示をしておくことが大切です。これをしないで、そのまま時効が完成してしまうと、万が一その後に遺言無効の訴訟も敗訴した場合には、相続分どころか遺留分も失ってしまうという大変なことになります。裁判例も出ておりますので、要注意です。
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